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私たちは犬の健康に良かれと思いドッグフードを選択している。ペットフードメーカーもまた、犬の健康を考えてドッグフードを製造しているはず。果たして本当にそうなのだろうか。
私たちはドッグフードの選び方を間違ってはいないだろうか。合成保存料などが使われていないなどの安全性の確保は当然のこととしても、人間が食べられる食材を使用しているとか、オーガニック認定だからナチュラルだからということだけでいいのだろうか。 もはや私たち自身がドッグフードについて正しい知識を持たなければならないと思う。そこで、「間違いだらけのドッグフード選び」というタイトルで、様々な知識をシリーズでご紹介。
第1回目の今回は、「なぜ、ドッグフードに穀物が使用されるのか?」とし、今なおドッグフードの主成分となっている穀類がなぜ使用されるようになったのかをご紹介。
犬は穀類を食べるように体はできていない 犬は穀類を食べるように体はできておらず、肉食性の動物で人間のように雑食性の動物では決してない。犬の祖先である狼と私たちの家族である現代の犬たちも全く同じ消化器を持っている。犬の消化器官は短く、肉をベースにした高たんぱくの食事に適応し、たんぱく質を効率よくエネルギー源として使用するように出来ている。
穀類などの炭水化物は肉食動物の犬にとって消化が困難であり、また穀類は炭水化物としてもたんぱく質としても栄養価は低く、犬は植物や穀物をベースにした食事をすることはできても、早期に栄養バランスを崩してしまうことがあるといわれている。
最近では獣医などの専門家は犬の健康問題の主要な原因は穀類と炭水化物にあると提唱しており、例えば穀類と炭水化物による犬の健康問題には、食糞、低血糖症、糖尿病、肥満などがあげられる。
ではなぜ、ドッグフードに小麦やトウモロコシなどの穀類が原材料として使われるのか。
犬が肉食ならば、何故ペットフードメーカーの多くが穀類を多く含んだ低たんぱく高炭水化物のペットフードを作るのか?
この疑問に答えるためには、市販ペットフードの歴史を理解することが早道だ。
犬が人間と共存してきた年月からすると、
ペットフードの市販が始まったのはごく最近のこと
ドライドッグフードとキャットフードの使用は第二次世界大戦後に始まったもので、市販ドッグフードの大半は、犬の健康よりも在庫期間と安さを追及した「人間の食物」を超加工したものといえる。
ドッグフードが市販される前は、犬はその生活環境の中で見つけられる食べ物を食べていた。
農場の犬であればごみ漁りで見つけた生肉の切れ端、生乳、卵などを食べ、都会に住む犬であれば飼い主のテーブルの残りくず、また肉屋からの安い肉端や生廃肉を食べるというように。
1860年にオハイオ州シンシナティのジェイムス・スプラットという人物が、最初の加工ドッグフードを販売した。そのドッグフードとは小麦、ビートルート、野菜、牛肉の血で出来たビスケットだった。
他社もこの新しい市場にすばやく着目、数々の焼きドッグフードが市場に出回り始めることになる。
1930年代の大恐慌の頃、ペットの飼い主はペットに与える餌を安く済ませようとし、その結果、生肉の量を減らし穀類を増やしたペットフードが登場、人気を得たという。
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1960年代 「廃棄物利用」がドッグフードの価値を高めるという風潮 |
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1960年代にはドッグフードメーカーは穀類の外皮、荷粉、人間用として不適切な肉などをドッグフードに利用し、「廃棄物利用」がドッグフードの価値を高めるという風潮があった。
新鮮肉や野菜の方が原材料として優れていると言われていたが、ペットフードメーカーは工場廃棄物など安価なものを与えても犬は健康でいられると主張していた。
第二次世界大戦後、ドライ加工ドッグフードの売り上げが伸び始める。この頃から、製粉業者や穀類販売業者は副産物の売り込み先としてペットフード業界をターゲットにし始め、また、屠殺場も人間用に不適切で使用不可能な肉副産物をペットフードメーカーに売り始めた。
初期の袋入り加工ペットフードの第一のセールスポイントとは、便利さだった。犬のボウルに乾燥したペットフードを入れるだけ、という簡単さと時間の節約が魅力だった。
第二のセールスポイントは、とある販売促進キャンペーンから始まる。
ドッグフードメーカーが製品の袋に、他の食べ物やサプリメントを必要としない「完全食」ラベルを貼り始め、さらにドッグフードメーカーは人々に向かって「テーブルの残りくずは犬の健康にとって良くない」と警告し始める。
ペットフード研究所(ペットフード製造業者の連合)は1964年に行ったキャンペーンで、テーブルの残りくずの危険さと加工ドッグフードを与える重要さを人々に告知した。
このキャンペーンは1000に上る新聞、RedbookやGood Housekeepingなどを代表とする16の雑誌、91のラジオ局を通して行われた。
1970年代に入るとペットフード市場戦略は加熱する。有名人のテレビコマーシャル起用、ドッグフードの粒のバラエティ変化、飼い主にとって「ナチュラル」で好ましく見えるような着色など、ありとあらゆる戦略で競うようになった。メディアでのペットフード広告は増え、犬自身の健康よりも飼い主が持つ「おいしくて食欲をそそるペットフード」のイメージにかなうパッケージデザインが開発された。
ペットフードの売り場は動物飼料店からスーパーに移動、明るいラベルと目立つ絵や写真を使ったパッケージで売られるようになる。
市場戦略は成功し、ペットフードの売り上げはベビーフードの消費額を上回り始めるようになる。
ドッグフードメーカーが次々と市場競争に参加するに従い、スーパーマーケットでのドッグフード売り場のスペースは益々広がっていった。
次の市場戦略はペットの病気専用に成分構成された「特別食」だ。
この戦略によって、「犬に必要な栄養を理解するのは素人の一般人には難しい」、という認識が生まれ、ペットの栄養について、飼い主自身の常識や判断よりも獣医のアドバイスを受け入れるようになり、ペットフードの売り場はスーパーマーケットから、今度は獣医のクリニックにまで広がることになる。
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1980年代前半 「プレミアム」と名付けられたドッグフードが登場 |
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1980年代前半、「プレミアム」や「スーパープレミアム」と名付けられたドッグフードが登場。これらのドッグフードは犬にとってより栄養価が高いとされ、子犬用、メインテナンス用、パフォーマンス用、シニア犬用など犬のライフステージごとに異なる成分構成で販売された。
この新しいスタイルのペットフードは「プレミアム」として販売されたが、実際は穀類多用、高炭水化物、低たんぱく質という古いスタイルのままの成分構成だった。
今日、獣医は未だに穀類ベースの高炭水化物ドッグフード、キャットフードを推奨している。
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1990年代 穀類を多用した低たんぱく高炭水化物のペットフードが未だに主流 |
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1990年代、消費者は自分達が摂る食事についての栄養知識を増やし始め、それと同時にドッグフードの原材料表示にも注意を払うようになり、いくつかの原材料に疑問を持ち始める。最も疑問視されたのは合成保存料だ。
合成保存料使用に関する世論の圧力を受け、ペットフードメーカーの多くがその使用を廃止、その代用としてビタミンC、ビタミンEを脂肪保存料として使い始め、そして現在に至る。
ペットフードメーカーの多くがオーガニックフード、あるいは鹿肉、魚、ウサギ肉などの新しい肉原材料を使用した「ナチュラル」フードを売っている。
しかし、ほとんどが未だに原材料を超加工し、成分の約65%に穀類、穀類増量剤、穀類繊維、穀類副産物を使用している。
昨今の消費者は更に知識を増やし、ドッグフードのたんぱく質原材料の品質、穀類の含有量などについても関心を増やしている。
このような傾向があるにも関らず、多くの獣医が未だに穀類ベースのペットフードを擁護し、有名なペットフードメーカーの製品をクリニックに並べているのは何故だろうか?
それは、獣医の多くが、ペットフードメーカーが獣医大のために出版した栄養学テキストを使用して学んでいるからだ。このテキストには「超加工された穀類ベースのドッグフードはペットの必要栄養素に見合うよう科学的に成分構成されている」と書かれている。
要約すると、「プレミアム」「スーパープレミアム」「ホリスティック」などを生み出した販売戦略にも関わらず、過去40年間でペットフードはほとんど変わってないということになる。
穀類を多用した低たんぱく高炭水化物のペットフードが未だに主流となっている。
穀類は安価でペットフードの嵩を増やし、加工も簡単。このためペットフードに大量に使用されている。
低価格で消費者をひきつけることを最大の目的とした今日の市販ペットフードのほとんどは、「ペットの健康を促進する」というペットフードの重要な目的を失っているといえるだろう。
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■穀物不使用・高たんぱくドッグフードの購入・問い合わせは:Apple Dog(アップルドッグ)
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■参考引用・協力:生物学的に適正なペットフード ACANA FAMILY JAPAN
関連掲載記事:
2009-2010 ペットフード オブ・ザ・イヤー受賞“ドッグフード”
穀物不使用! アレルギーに配慮、消化吸収の良い魚のドッグフード
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【記事後記】
犬は穀物の中でも白米からはほとんど完全に炭水化物を吸収することができますが、他の穀物では栄養価の最高20%は未消化になりえます。また、小麦、豆、オーツ麦の栄養の有効性は低いようです。
例えば、全粒小麦だから栄養が豊富としても消化性が悪ければ何の意味も持ちません。ペットフードメーカーの多くは、完全栄養食として豊富な栄要成分について謳いますが、その消化吸収性についてはほとんど触れることがありません。
ドライフードの多くは上位3つの原料の2つがほとんど常に何らかの形の穀物生産物です。例えば、あるドッグフードの上位4位の原料は、順にチキン、挽き割りトウモロコシ、挽き小麦、トウモロコシグルテンとなっています。2つの原料がトウモロコシベースの原料です。ペットフード業界の習慣的手法で「分割」として知られています。
このように、トウモロコシとトウモロコシグルテンとして、同じ原料が異なった名称で別に記載されるのは、トウモロコシ原料の合計がチキンより重いかもしれないのに、あたかもトウモロコシがチキンより少ないように見せかける為です。
私たちがドッグフードを選ぶ判断基準の一つである成分表示にさえこういった方法が行われていることを知る必要あります。 私たちも愛犬の健康のために、ドッグフードについて正しい知識を持たなければならないと思います。
(瑞木 こころ)
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