矯正は肉体に与えるもので、犬にとって不愉快でしかも効果的なものをいいます。象徴的矯正は、肉体に与えるものではなく、何ら意味を持たない情報が、矯正に結びついたものです。口笛や、指を鳴らすなどで、好ましくない行動を止めさせることができるもののことです。 |
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「口笛」を象徴的矯正にする方法
(1)犬がソファーをかじる→鼻面を平手で叩く(矯正)→犬は止める
(2)犬がソファーをかじる→
鼻面を平手で叩く(矯正)と同時に、口笛を吹く(象徴的矯正)→犬は止める
(3)犬がソファーをかじる→口笛を吹く(象徴的矯正)→犬は止める
単純に説明すればこのようになります。
鼻を平手で叩くのは、犬の体格と性質により当然加減が必要ですが、これは犬にとって不愉快な刺激です。犬がソファーをかじると同時に無言で不意に鼻を叩けば効果的です。犬は止め、驚いた顔で飼い主を見つめます。そしてそれをやめてもらうために、なだめの姿勢(体を低くし、耳をたたむ)をとります。
鼻を平手で叩くのと同時に、口笛を吹くと、今後、口笛は鼻を平手で叩くのと全く同じ効果を持つようになります。こうなれば、もう体罰は必要ではありません。実際、口笛を吹くと、犬はなだめの姿勢をとるようになります。こうなると、日常は同じ調子の口笛を吹いてはいけないことになります。
口笛の代わりに、鼻を平手で叩くのと同時に「ノー」や「イケナイ」と言えば、それが象徴的矯正になります。ただ、何も教えていない犬にとって象徴的矯正はなんら意味を持たず、役に立ちません。
矯正の強さの程度は、犬がその行動を即座に止めるくらいの強さが必要ですが、これは犬の感受性によりますので、実際にどの程度が適当かというのは難しいものです。まずは、自分の犬をよく観察して、性格を研究し、犬が悪い事をしたときは毎回、必要にして十分な程度で矯正します。このときにその都度、口笛や「ノー」や「イケナイ」などの象徴的矯正を決めて、鼻を平手で叩くのと同時に行います。
そして、もう一つ最も大切なことは、矯正や象徴的矯正で悪い行動を犬が止めたら、すぐに思いきり誉めることです。「犬がソファーをかじる→口笛を吹く(象徴的矯正)→犬は止める→誉める」。これが最も効果的です。
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矯正は犬に苦痛を与える目的ではない
矯正はしつけの中の教育手段です。苦痛を与えることが目的ではなく、確かな理由のもとで適切な方法を用いられるべきものです。鼻面をピシッと平手で叩かれるのは、あまり痛くない割りに、不意を打たれるし不愉快なので効果的です。
ちなみに、犬を棒や新聞紙などで叩くのはまったく効果がありません。もし、あるとすればそれは「恐怖」です。命令にはよく従いますが、それはその人を満足させるためでも、自分が満足してそうするのでもありません。暴力を恐れているからです。犬がいうことをきくのは、恐怖感から罰を予測し、そのようなことが起きないようにするからです。これは権威と力の関係によるもので、信頼と協力関係からくる結果ではありません。
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矯正における最大の注意点は現行犯で捕まえること
矯正をする場合に、犬の好ましくない行為を現行犯で捕まえることが必要です。
●行為の最中を捕らえる(1秒後ではすでに遅い)。
●怒ってはいけません(怒りは犬の恐怖や苛立ちを招く)。
●矯正するときは「いけない」「ノー」以外の言葉を使わない。
●犬が犬に体罰を与える場合、首、耳を噛むのでそれを真似する。それが嫌なら、手で首の皮をつかみ、 犬を伏せの姿勢に入れる。またはひっくり返す。または鼻面をピシッと平手で叩く。
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即座に矯正しないと意味がない
好ましくないある行為が矯正されないなら、犬はその行為は許されたものと考えます。もし、ソファーを5分かじってから矯正されたとしても、その5分の間に犬は楽しみ、報いられたことになります。5分前に矯正されなかったことがすでに褒美となっているのです。時間が経ってから矯正してもすでに遅いのです。 犬が目の前で悪い事をしていて、何もしないとするなら、それは犬の行為に対して許可を与えていることになります。タイミングがずれた矯正は、飼い主が犬に対して、何をしたいのかを教えられないことになります。 犬が悪いことをしている(これを犬はしてもかまわないと思っている)、しばらくすると飼い主が「いけない」という。これは飼い主が犬に対して「それをしていてもイイヨ、いや、やっぱりダメ」と言っていることになります。犬は、はじめはイイヨといわれ、そしてイケナイといわれていることになり、犬はどう受け止めていいかわからなくなってしまいます。
また、犬が好ましくない行動をとるとき、例えば吠える、家具をかじる、リードを引くなどをするとき、時間の経過とともに、徐々に興奮が高まっていきます。遅く矯正することは、犬の興奮を抑えるためにより多くのエネルギーが必要です。つまり、より強い矯正が必要となります。犬が悪さを始めたところなら、鼻を平手で叩けば効果のあったものが、時間が経って同じように鼻を平手で叩いても、それは矯正とはなりません。犬に苛立ちがつのったり、犬にとって争いあるいは威嚇と感じるようになります。その結果、犬の興奮が高まる、怒るなどして問題が大きくなったり、犬の攻撃を引き起すことにもなりかねません。 |
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